【Encounter...】 @priscillamovie
ハートのチョーカーにfuzzyなピンクのニットとたくさんのラブレター。
ワールドスターと暮らす大豪邸には真っ白でふわふわのトイプードルの子犬と、リボンがついたドレスに濃いアイメイク。
4/12より公開された、エルヴィス・プレスリーの元妻プリシラによる回想録 "Elvis and me(エルヴィスと私)" をもとに、14歳の少女だったプリシラがエルヴィスと共に過ごした時間と成長を描いた映画 "Priscilla" をご紹介。
メガホンを取ったのはガーリーカルチャーを牽引し続ける、ソフィア・コッポラ。
そして次々と話題のヒット作を生み出す製作配給会社A24がアメリカの配給を担当。
2022年に公開されたバズ・ラーマン監督の "Elvis" が、世界的スターのエルヴィス・プレスリーの華やかでドラマチックな人生を目紛しく描いたのに対して、こちらは完全なるプリシラサイド、女性目線のストーリー。
親の事情でテキサスからドイツにやって来て退屈な日々を過ごす少女・プリシラの気怠く陰鬱な雰囲気に、1950〜60年代を彷彿とさせるキュートなファッションやインテリアが一気に世界へと引き込んでくれる。
プリシラがエルヴィスと共に長年過ごす事になるグレースランドの大豪邸ももちろん素晴らしいが、プリシラのパーソナルな部分が感じられるドイツで家族と暮らした自宅の部屋のディテールは、手に取るレターセットからカレンダーや雑誌の細部まで抜かりない。ソフィアの代表作でもある "The Virgin Suicides" ぶりにスクリーンの隅々までチェックしてしまった。
特に記憶に残ったスタイルをイラストで！
ケイリー・スピニー演じるプリシラの愛くるしさと危うげな魅力に、ソフィアが作りあげた非現実的に見えるエルヴィスとプリシラの暮らす世界が見事にマッチしている。
ちなみに実際のエルヴィスの身長は約6フィートと言われており182cmで、プリシラは163cmの約20cm差だったというが、劇中の2人はなんと約40cm差(エルヴィス役のジェイコブ・エロルディが193cm!)なので、より一層華奢で小さなプリシラがエルヴィスに一生懸命ついていく様は健気だが少し心配になってしまうほど。
劇中のアイコニックなプリシラのウエディングドレスはCHANELが制作
ファッションやヘアスタイル、メイクにネイルと細やかな変化を示すことでプリシラを取り巻く環境、彼女の心境の変化が伺い知れる細やかな演出にもソフィア節が炸裂。
今や見慣れた「エフェクト」の一つのような8mmビデオだが、劇中に途中で差し込まれる幸せそうなエルヴィスとプリシラのホームムービーは実際の映像に限りなく近く、プリシラが語った内容を忠実に再現することでプリシラは孤独ばかりではなく、エルヴィスと愛し合い楽しい時間も過ごしたことが伝わるシーンが多かった。
誰しもが憧れた唯一無二のスーパースターと共に生きる選択をした少女だったプリシラが一人の女性へと成長し、自らの意志で決断し生きてゆく姿も必見。
ソフィア作品やガーリーカルチャー好きのみならず、エルヴィス好きはもちろんのことエルヴィスを取り巻いた当時のカルチャーや時代背景に興味がある方も楽しめる映画となっていた。
(劇中、エルヴィスの楽曲は一切流れないので注意！）